著作権登録制度とは?申請の流れやメリット、特許・商標権との違いを解説
● 「著作権って登録する必要はあるの?」
● 「著作権・特許・商標権の違いを知りたい!」
著作権は自然に発生するため、権利を登録する手続きは必要ありません。しかし、著作権トラブルに発展した際に著作者の権利を保障するためにも、著作権登録制度が設けられています。著作者や公表年月日などを明確にし、作品の制作者が著作物の権利を主張する際に役立ちます。一方で、著作権譲渡や著作権処理の具体的なやり方が分からないといった方もいるでしょう。今回はそんな方のために著作権登録について徹底解説します。
著作権登録で申請できる項目
著作権登録によって保護されるものについてご紹介します。
● 著作者の実名
● 公表年月日
● プログラムの創作年月日
● 著作権などの移転
● 出版権の設定
著作者の実名や作品の公表年月日、著作権の譲渡先などを登録することで、作品の制作者や作品の制作に関係した者の権利を守ります。ここからは、上記5つの点について詳しく解説します。
著作者の実名
著作者は、著作物を無名や変名で公表することがあります。たとえば、漫画作品や小説などの文章作品ではペンネームなどを用いるケースが多く、実際に著作者の氏名は表示されません。また、場合によっては作品にそもそも名前を表記せず、匿名(無名)で公表することもあるでしょう。その場合、無名や変名の作品を誰が制作したのか、わからなくなります。作品の制作者が著作物に実名登録をしていなければ、他人に著作者としてなりすましをされたり勝手に実名登録をされたりと、著作権トラブルに発展する可能性があるのです。著作者であるにも関らず、作品の制作者として裁判で主張できなければ、権利が不当に害される可能性があります。著作者の権利を保護するためにも、作品に実名を登録することが可能です。
また、著作物に実名を登録できる者は、以下の通りです。
● 作品を無名で公表した著作者
● 作品を変名で公表した著作者
● 無名や変名で作品を公表した著作者が、遺言で指定した者
著作物で得られる利益を不当に害されないためにも、実名の登録申請を行いましょう。
公表年月日
公表年月日とは、初めて作品を世の中に公表した日付のことです。たとえば、小説や漫画の発表・販売を開始した日付や、作品を動画サイトやSNS、Webサイトなどでインターネット公開した日付が、公表年月日です。著作権の保護期間は原則、著作者の死後70年間とされています。一方で、無名・変名や団体名義の作品、映画といった著作物は、著作者が誰かを特定しづらく死亡日時を判定できないため、保護期間が例外的に公表後70年間に設定されています。著作物の公表年月日を登録しておけば、作品の著作権保護期間の起算点に関する争いなど、著作権侵害に関するトラブル時に役立つのです。また、公表年月日を登録する者は、以下の要件を満たす必要があります。
● すでに公表されている作品であること
● 申請者が作品の著作権者
● 申請者が無名・変名作品の発行者
公表年月日の登録申請を行うには、該当作品がすでに世間に公表されている必要があり、未発表の著作物は登録できません。また、公表した著作権者だけでなく、小説や漫画作品を発行した者であっても著作権登録を行うことが可能です。
プログラムの創作年月日
プログラムの著作物を作成した者は、そのプログラムの著作物が創作された年月日を登録することが可能です。プログラムの著作物とは、コンピューターをプログラムで作動させ、1つの結果を生み出せるコードなどを指します。基本的に、著作物として認められるのは、人の思想や感情を表現している作品です。そのため、単なる事実やデータなどに著作権は発生しません。プログラムに関しても、「プログラム言語」やプログラムを作成するための規約や解法などは著作物には該当しないのです。しかし、コンピューターを作動させるプログラムのコードに作成者の個性が表現されていれば、著作物として認められるでしょう。一般的にプログラムの著作物は公表することが少なく、企業の業務に使われ世間に発表せずに利用されることが多いです。上記では、公表年月日を登録できるのは「すでに著作物が公表されていること」が必要だと述べました。社内の業務でしか使わないプログラムの場合、公表されていないためにそもそも公表年月日を登録できないといった不都合が生じるのです。その不都合を解消するため、プログラムの著作物を作成した著作者には、創作年月日を登録する権利が認められています。
著作権などの移転
作品の著作権や著作隣接権は、著作者とは別の者に譲渡することが可能です。著作物の権利が変動した際、譲渡された者は「権利を譲り受けた」という事実を登録できます。作品の権利が譲渡されたことを証明すれば、著作権トラブルが発生した際、第三者に対抗することが可能です。著作権の移転登録は、「登録する権利を保有する者」と「権利を譲渡する者」が共同で行う必要があります。どちらか一方が不在である場合、原則著作権の移転登録は進められません。ただ、著作者や作品の権利者が申請者に承諾書を渡していたり、著作権を争う裁判で判決が認められたりした場合であれば、権利の譲受人は単独で登録申請を行えます。
出版権の設定
著作物には、作品の制作者が有する著作権だけでなく、小説や漫画作品などの出版社にも出版権という権利があります。出版権を有する者が、該当作品の複製や販売、頒布を独占的に行うことが可能です。無断で複製や販売をする出版社がいた場合、出版権を有する者は出版の停止を請求できます。著作権登録制度では、出版権を申請するだけでなく、出版権の移転に関しても申請することが可能です。著作物の出版権の登録は、上記で述べた著作権の移転登録と同様に、原則「出版社」と「著作権者」が共同で行う必要があります。例外的に、著作権者の承諾書や判決文があった場合、出版社が単独で申請できます。
著作権・特許権・商標権の違い
著作権や特許、商標権の違いについてご紹介します。
● 著作権とは?
● 特許権とは?
● 商標権とは?
● 著作権・特許・商標権の違いまとめ
著作権は自然に発生するため、必ずしも登録申請を行う必要はありません。一方で、特許や商標権は、特定の機関で権利の登録を行う必要があります。
著作権とは?
そもそも著作権とは、自分が制作した作品が無断で他人に利用されないための権利です。著作物の制作には、作品を販売して利益を得たり自分の考え方を世間に発信したりと、さまざまな目的があります。第三者が作品を勝手に複製して販売することや、不特定多数が閲覧できる状態でインターネット公開される行為は、著作者の経済的利益が不当に害されてしまいます。また、公表する作品に著作者の氏名が表示されなかったり、作成した意図に反する形で頒布されたりすれば、作者の名誉が毀損されることも考えられるでしょう。著作者の経済的・人格的利益を守るためにも、すべての作品は著作権によって保護されているのです。
特許権とは?
特許権とは、発明によって得られる利益を保護するための権利です。基本的に、特許権で保護される発明は目で見ることのできないもので、自然法則による技術思想の創作を対象とします。特許を登録するためには、以下の要件を満たす必要があります。
● 産業上利用できる発明であること
● 新規性や進歩性があること
● 物や方法の発明であること
● 自然法則による技術思想の創作が高度であること
特許権を取得するためには、権利の登録申請が必須です。一方で、著作権は登録をせずとも自然に発生します。また、著作権が表現されたもののみを保護対象とするのに対し、特許権は「アイデア」までも保護します。そのため、著作権と比べると独占性が極めて強い権利なのです。
商標権とは?
商標権とは、企業ブランドの目印を保護するための権利です。会社や商品・サービスのロゴなどが勝手に第三者に利用されてしまうと、ブランドイメージが低下したり経済的な利益が害されたりと、さまざまなリスクが伴います。自社の標章が無断で利用されないためにも、商標権によって守られているのです。特許権と同様に、登録申請を行うことで取得できます。商標権登録に必要な要件は、以下の通りです。
● 自他商品・役務識別力があること
● 公共性に反していないこと
● 他人の標章と紛らわしくないこと
著作権が登録申請を必要としないのに対し、商標権は権利を取得する手続きが必要です。また、商標権は商標を独占的に利用できる権利であるため、他人が作成したロゴなどが偶然似てしまった場合も、権利侵害を訴えることができます。一方で、著作権は意図せず盗作してしまっても、権利侵害とならないケースがあるため、商標権の方が独占性が高いと言えるでしょう。
著作権・特許権・商標権の違いまとめ
著作権・特許権・商標権の違いを簡単にまとめると、以下の通りです。
保護対象 | 登録手続きの有無 | |
---|---|---|
著作権 | 人の思想や感情が表現された作品 | 任意 |
特許権 | 物や方法などの発明 | 必須 |
商標権 | 会社や商品・サービスのロゴといった標章 | 必須 |
著作権・特許権・商標権の保護対象は異なり、権利取得によって得られる独占性も変化します。また、著作権の登録手続きは任意ですが、さまざまなメリットがあるので申請するケースが多いです。具体的なメリットは、下記で詳しく解説します。
著作権登録のメリット
著作権登録の具体的な効果についてご紹介します。
● なぜ登録制度があるのか?
● 登録するメリット①|実名登録の場合
● 登録するメリット②|公表年月日・創作年月日登録の場合
● 登録するメリット③|著作権移転登録の場合
● 登録するメリット④|出版権の設定登録の場合
そもそもなぜ著作権登録制度があるのか、気になる方もいるでしょう。
ここからは上記5つの点について具体的に解説します。
なぜ登録制度があるのか?
著作権登録制度が設けられているのは、著作権に関する裁判が発生した際の法律事実を公示したり、著作権や著作隣接権が移転する取引の安全性を確保したりするためです。上記でも述べたように、著作権は自然に発生する無方式主義が採用されています。無方式主義とは、登録手続きを必要としない考え方のことです。一方で、著作物に関する裁判では、無方式主義が原因で事実確認が難しく、権利者の主張が通りづらい可能性があります。権利を正当に有するはずの者の主張が認められなければ、作品の制作者本人や制作に関わるものたちの利益が不当に害されてしまうのです。著作権の法律事実の確認や取引の安全性を確保を行うためにも、著作権登録制度が設けられています。
登録するメリット①|実名登録の場合
著作者が作品の実名登録を行うメリットについて解説します。具体的なメリットは、以下の通りです。
● 著作者の推定
● 著作権保護期間の延長
作品の実名登録を行えば、著作者であることを争う際に登録者が当該作品の著作者であることが認定されます。また、原則著作権保護期間は著作者の死後70年間ですが、無名・変名作品の場合、公表後70年間となります。実名登録を行うことで、登録者の死後70年間に変更されるため、保護期間が延長されるのです。
登録するメリット②|公表年月日・創作年月日登録の場合
著作権者が作品の公表年月日・創作年月日を登録するメリットについて解説します。具体的なメリットは、以下の通りです。
● 公表年月日・創作年月日の推定
● 日本が最初の発行地であることの証明
小説やプログラムなどの著作物における公表年月日や創作年月日を登録することで、保護期間が申請した日付の翌年から、70年間の保護期間があることを保証できます。また、日本で制作された作品の著作権を守るためには、最初に公表された場所が国内であることを証明しなければなりません。公表年月日を登録することで、事実上日本で作品が公表されたことを示す情報となるのです。
登録するメリット③|著作権移転登録の場合
作品における著作権の移転登録のメリットについて解説します。具体的なメリットは、以下の通りです。
● 著作権が譲渡されたことを証明できる
● 第三者に対抗できる
著作権や著作隣接権の移転登録を行えば、自分に権利が譲渡されたことを推定できるため、譲受人は複製や公開などの使用許可を申請する必要がなくなります。また、第三者と権利を争う際に、移転した事実を提示することで対抗することが可能です。
登録するメリット④|出版権の設定登録の場合
作品の出版権の設定登録を行うメリットについて解説します。具体的なメリットは以下の通りです。
● 複製や頒布できる権利者を推定できる
● 無断出版に差止請求を行える
出版権の登録を行った出版社は、著作者の作品を複製しての販売や頒布が可能で、権利があることを推定できます。また、他の出版社が無断で該当作品を出版した場合、「出版権は自社にある」と主張でき、出版の停止を求められるでしょう。
著作権登録を申請する方法
著作権登録の申請をする流れは、以下の通りです。
● 登録申請の書類を作成する
● 文化庁やソフトウェア情報センターに書類を申請する
● 管理機関や団体の審査を待つ
● 登録済通知書もしくは却下通知書が手元に届く
プログラムの著作物はソフトウェア情報センターに登録申請を行い、それ以外の作品は文化庁に申請するのが一般的です。登録申請を行えば必ず審査を通過できるわけではなく、場合によっては却下されることもあります。著作権登録が却下されないために確認すべきポイントとして、以下の点があげられます。
● 正しい申請内容で記載できているか
● 登録に必要な書類が揃っているか
● 登録免許税を納付しているか
実名登録したい作品が無名・変名で公表されているかや、公表年月日の登録はすでに作品が公表されているかなど、申請内容が正しいか確認しておきましょう。登録の申請に必要書類は、登録内容によって異なるので注意が必要です。また、登録免許税とは、手続きをする際に納付しなければならない税金のことで、申請書に収入印紙を添付しなければなりません。 著作権を抹消する際に関しても、文化庁やソフトウェア情報センターに申請することで手続きできます。
今回は、著作権登録の概要について解説しました。著作権登録で登録できる内容のまとめは、以下の通りです。
● 無名や変名作品における著作者の実名
● 著作物の公表年月日
● プログラム著作物の創作年月日
● 著作権の移転
● 出版権の設定
作品の権利を登録するためには、文化庁やソフトウェア情報センターで著作権処理を行う必要があります。申請書の記載事項や必要な書類などは、著作権譲渡や登録内容によって異なるのでチェックしておきましょう。ぜひ本コラムを参考に、著作権登録を申請してください。