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教材のスキャンやコピーは著作権違反?著作物の複製物を生徒へ送る際の注意点

塾や予備校、学校では、授業のために教科書や問題集をスキャン・コピーし、生徒へ共有する場合が多いです。一方で、著作者の許可なく作品の複製を配布したりインターネット公開をしたりすると、著作権問題に発展する可能性があります。著作権侵害として訴えられると、民事上の請求を受ける場合もあるため、教員の方々は教材を複製する際のルールについて把握しておくべきです。今回は、教材のスキャンやコピーに関する著作権問題について解説します。本コラムを読めば、安心して複製物を作成し生徒に共有できるでしょう。また、「授業」における利用や個人利用などの自由に教材を使える場合もご紹介しているので、ぜひご覧ください。

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教材のスキャンデータやコピーを生徒に送る際の著作権問題

教材のスキャンデータやコピー資料を生徒へ配布する際、ルールを守らなければ著作権問題に発展する可能性があります。ルールを把握していない場合、意図せず著作権を侵害してしまう教員の方もいるでしょう。教材に関する著作権の理解を深めるためにも、まずは下記の内容について簡単に説明します。
● そもそも著作権とは?
● 著作権が必要な理由
● 著作権侵害が成立する要件
● 教材の複製物を生徒に送ると著作権侵害が成立するリスクがある
そもそも著作権とは何を守るための権利なのか、著作権侵害をしてしまう具体的なケースについて把握しておきましょう。ここからは、上記3つの点について詳しく解説します。

そもそも著作権とは?

著作権とは、作品が許可なく勝手に利用されないための権利です。創作活動によって制作されたすべての作品には、無方式主義により著作権が発生しています。無方式主義とは、権利の登録手続きを必要とせず、創作された時点から自然に権利が生まれる考え方のことです。「この教科書や問題集は著作権を登録していないから許可なく使用できる」といった判断はできません。そのため、教材をスキャン・コピーしたり、インターネットで公開したりする際は、基本的に著作者を探し利用許諾を得る必要があるのです。

著作権が必要な理由

著作権は、以下の著作者が有する2つの利益を保護するために存在します。
● 経済的利益
● 人格的利益
著作物を創作する場合、その作品の販売や宣伝などを行い、商品の売上やブランドの知名度を向上させることを目的とする場合も多いです。第三者が購入することを前提として制作された著作物が、インターネットで無断転載されると、不特定多数の人が無料で閲覧できる状態となり、経済的利益を確保できなくなるでしょう。また、著作物を世間に公表することで、自分の声望や名誉を高めることを目的とする場合もあります。作者の意図に反した形で著作物が改変されたり、作品とは全く関係のないジャンルのメディアに転載されたりすると、著作者の声望や名誉が傷つけられる可能性があります。著作物の不当な利用により、作者の経済的利益・人格的利益を守るためにも、著作権が存在するのです。

著作権侵害が成立する要件

著作権がどのような権利なのかについて説明しましたが、具体的に何をすると著作権侵害に該当するのか、気になる方もいるでしょう。ここでは、著作権侵害が成立する具体的な要件について解説します。著作権侵害が成立する際は、以下の要件をいくつか満たしている場合です。
● 該当作品が著作物であること
● 著作権の存在が認められること
● 著作権の効力が及ぶ範囲であること
● 著作権を有していないこと
● 著作物に類似性・依拠性があること
著作権侵害が成立するのは、該当の作品が単なる事実やデータではなく、人の思想や感情によって創作された著作物である場合です。(参考:著作物について | 文化庁)
著作者が権利を放棄していたり著作権保護期間が過ぎたりしない限り、作品の著作権は作者が有するため、許可なく利用すると権利侵害にみなされます。また、権利を侵害している疑いのある著作物が、元の作品に似ているなどの類似性や依拠性が高い作品であれば、著作権侵害と認められる可能性が高くなるでしょう。

教材の複製物を生徒に送ると著作権侵害に該当するのか

結論から言うと、教材のスキャンデータやコピーを生徒に送ることで、著作権侵害になるケースとならないケースがあります。生徒へ複製物を配布・送信した際に著作権侵害が成立するのは、営利目的の機関である場合や、著作権法の使用ルールに沿っていない場合です。生徒へ学習指導を行う現場では、著作物を創作することよりも、授業のために教材をスキャン・コピーで複製することが多いでしょう。そのため、塾や予備校、学校などの職員の方は、複製に関する著作権について把握しておきましょう。複製物に関する詳しい著作権については、下記の「教材のスキャンデータやコピー資料を利用できる範囲」と「学校現場における教材のスキャンデータやコピー資料の共有」で解説します。

教材のスキャンデータやコピー資料を利用できる範囲

教材のスキャンデータやコピー資料を利用できる範囲について解説します。
● 著作権における「複製」とは?
● 教材を自由に複製できる場合
● 塾や予備校、家庭教師の現場では教材の使用許諾が必要
● 教材を許可なく複製した場合のリスク
営利目的で運営する塾や予備校などでは、著作物を無断で複製することは認められていません。ここからは、上記4つの点について具体的に解説します。

著作権における「複製」とは?

生徒への学習指導を行う際、印刷機によるスキャンやコピーなどの方法を用い、教科書や問題集を複製する方も多いでしょう。上記でも述べましたが、基本的に著作物を無断で複製して配布することは、著作権の侵害行為に該当します。著作権法第2条15項では、著作物の複製に関して下記のように明記しています。

複製 印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること

引用:著作権法 | e-Gov法令検索

複製とは、印刷や撮影に限らず、録音や録画といった方法による複製も当てはまります。近年では、動画付きの教材なども普及しているため、スキャン・コピーなどの行為だけでなく、説明動画の複製に関しても注意が必要です。

教材を自由に複製できる場合

基本的に、スキャン・コピーにより教材を無断で複製することは認められていませんが、著作権法に定められた条件を満たせば、自由に複製できる場合があります。すべての教材において、無断複製を禁じると文化的な発展が妨げられるからです。たとえば、授業を目的として教材を利用する度に著作者に利用許可を得る必要がある場合、許可を申請・承諾する手間や時間、使用料金の支払いによる金銭的な負担が生じます。教育機関によっては、許可を得るための資金や事務処理を行う人手が足りずに、十分に生徒へ学習指導を行えない可能性があるでしょう。そのため、学校教育や個人利用においては教材を許可なく複製することが認められています。(参考:著作物が自由に使える場合 | 文化庁) 著作物を自由に複製することが許されている具体例の一部として、以下のような場合があげられます。
● プライベートでの使用
● 図書館の運営
● 引用
● 教科用図書への掲載
● 学校教育番組の放送
● 教育機関による学習指導
● 入試問題や定期テストなどの問題作成
● 視覚・聴覚障害者のための複製
教育機関は、授業を目的として教材を無断で複製することができます。ただ、教科書や問題集を複製する際は、必要最低限の部分だけコピーしたり、引用元を明記したりといったルールが課せられているので注意しましょう。具体的なルールについては、下記の「学校現場における教材のスキャンデータやコピー資料の共有」で述べているので、ぜひご覧ください。

塾や予備校、家庭教師の現場では教材の使用許諾が必要

上記では、教育機関であれば教材を許可なく複製できると述べましたが、営利目的ではない機関に限定されています。中学校や高等学校、大学などの教育機関は無断複製が認められていますが、営利目的で運営する団体や機関は、利用許可を申請する必要があります。そのため、塾や予備校を運営する教員や家庭教師の現場では、教科書や問題集を複製するために使用許諾を得る必要があるのです。

教材を許可なく複製・配布した場合のリスク

塾や予備校、家庭教師の現場において、教材を許可なく複製した場合、権利者から以下のような請求を受ける可能性があります。
● 差止請求
● 損害賠償請求
● 不当利得返還請求
● 名誉回復等の措置請求
著作権は、著作者の経済的利益や人格的利益を保護する権利です。そのため、教材の複製物の配布により著作権を侵害していると裁判所が判断した場合、今後教材を利用できなくなる差止請求を受けます。また、経済的な利益が損失したとして、損害賠償金の支払いや不当に得た利益の返還が命じられるでしょう。さらに、教材の無断利用により著作者の名誉や声望が傷つけられた場合、自社の公式サイトやSNSでの謝罪や新聞による謝罪広告などを掲載する必要があります。

学校現場における教材のスキャンデータやコピー資料の共有

生徒へ指導することを目的とすれば、小中学校や高等学校、大学に属する教員は許可なく教材を複製し配布することができます。ただ、自由に使えるといっても著作権法のルールを守って利用しなければ、著作権トラブルに発展する可能性があるので注意しましょう。ここでは、学校の教員が著作物をスキャン・コピーして複製する場合の著作権について、詳しく解説します。
● 学校授業で教材をスキャン・コピーするシーン
● 著作権法における「学校」「授業」とは?
● 授業を目的として教材を複製できる範囲
著作権法には、著作物を自由に使える場合の教育機関や授業について明記しています。ここからは、上記3つの点について詳しく解説します。

学校授業で教材をスキャン・コピーするシーン

教科書や問題集をスキャン・コピーする一般的なシーンとして、以下の例があげられます。
● 生徒に向けた授業で使用する資料の作成
● リモート授業で生徒に送信するための資料の作成
● 試験問題の作成
● 宿題の作成
効率的に学習指導を行い授業における理解度を高めるためにも、生徒が持つ教科書だけでなく、他の参考書をコピーして配布するケースもあるでしょう。また、入試問題や実力テストといった試験問題の作成では、普段生徒が利用しない問題集から引用する可能性が高いです。上記のように、塾や予備校に限らず学校でも教材を複製する機会が多いのです。

著作権法における「学校」「授業」とは?

著作権法では、学校における授業での使用が目的であれば、教材を自由に複製することができます。しかし、そもそも著作権法における「学校」や「授業」とは何なのか、疑問に感じる方も多いでしょう。著作権法が定める学校や授業とは、以下のことを指します。

学校 ● 幼稚園
● 小学校
● 中学校
● 高等学校
● 大学
● 職業訓練に関する教育機関
● 社会教育施設
● 教育センターと教職員研修センター
● 学校設置会社の運営校
授業 ● 国が定めた教育機関が実施する授業
● 学校行事などの特別活動
● 部活動
● 教員免許更新講習(2022年7月1日から教員免許制度廃止)
● 通信教育授業
● 履修証明プログラム
● 社会教育施設の講座や講演

また、名称や年齢を問わず上記の学校に属する教員や生徒であれば、著作物の使用が認められています。

授業を目的として教材を複製できる範囲

著作権法では、教育現場における著作物の複製に関して、ルールを定めています。スキャンやコピーにより、学校教員が教材を複製する際の具体的なルールは以下の通りです。
● 複製する必要性がある
● 必要最低限の部分を複製する
● 複製した本人が授業で利用する
● 公表されている教材である
● 慣習化された引用ルールがある場合はそれに従う
漫画やアニメのイラストや雑誌の写真など、授業に必要性のない著作物を複製するといった行為は、認められない可能性が高いです。また、問題集の大部分を複製して生徒へ配布するといった行為は、受け取った本人がその教材を購入することなく利用できる状態となります。購入を前提とした教材であれば、著作者の経済的利益を不当に害する場合があるので、必要最低限の部分のみを複製しましょう。

教材のスキャンデータやコピー資料を共有する際の注意点

教材のスキャンデータやコピー資料を生徒に共有する際の注意点について解説します。
● コピー資料の配布
● インターネット公開・動画サイトへの投稿
著作権トラブルに発展しないためにも、教材を生徒へ配布・送信する際の注意点について把握しておきましょう。ここからは、上記2つの点について解説します。

コピー資料の配布

教科書や問題集のコピー資料を作成する際は、必要最低限の部分を複製しましょう。上記でも述べたように、教材を丸々コピーしたり大部分を複製したりすると、生徒はその教材を購入せずに利用できます。購入者の数が減少すれば、著作権者の経済的利益が害されるため、著作権を侵害してしまう可能性があるのです。

インターネット公開・動画サイトへの投稿

インターネットで公開したり、動画サイトへ投稿したりと、教材のスキャンデータをWeb上で配信する際は、閲覧制限をかけましょう。教科書や問題集を不特定多数が閲覧できると、著作権者の経済的利益を不当に害する可能性があるからです。また、授業目的公衆送信補償金制度により、インターネットを経由して教材を共有する際は、補償金を支払う必要があります。(参考:授業目的公衆送信補償金制度とは) 補償金を支払わなければ、著作権トラブルに発展するリスクがあるので注意しましょう。

まとめ

今回は、教材のスキャンデータやコピー資料を生徒へ送る際の著作権問題について解説しました。 基本的に、塾や予備校、家庭教師の現場などの営利目的で教材を複製する際は、権利者に利用許可を得る必要があります。 一方、個人利用を目的とする場合や学校の「授業」における利用であれば、著作物を許可なく複製できます。 生徒へ学習指導を行う方は、インターネット公開の仕方や複製する範囲など、教材を生徒に共有する際の注意点を把握しておきましょう。 著作権トラブルを防止するためにも、ぜひ本コラムを参考に教材を利用してください。