家庭教師で使う問題集の著作権とは
家庭教師は、生徒の受験対策や授業のキャッチアップをサポートする存在です。家庭教師といってもいくつかのタイプがあり、対面で1対1でやる方式もあれば、オンラインで対応する方式などがあります。そして、雇用形態においてはさまざまであり、企業で雇われている社員や学生アルバイトもいれば、個人で事業として展開している人などもいて、多種多様です。
家庭教師の講義は多様であり、オリジナルテキストもあれば、市販の問題集などさまざまです。本記事では、家庭教師が使う教材の著作権について、絶版などの知っておきたいことを解説していきましょう。
家庭教師は「授業」を行えるのか
家庭教師は、学校と同様、教え子をサポートする仕事であり、「教える」という観点から見ると仕事内容も似ています。家庭教師がやることは、「授業」と捉える方もいるかもしれませんが、著作権法35条で定められているとおり、「授業」ができるのは、あくまでも「学校その他の教育機関(※営利を目的として設置されているものは除外)」であり、塾扱いとなる家庭教師は該当外であり、授業を行うことはできません。
問題集のコピーは違法か
家庭教師は、生徒を相手に数式を解くプロセスや古文を効率良く覚える方法などを教えるだけでなく、ときには問題集を用いた時間を設けています。ただし、家庭教師が問題集を講義で使う場合、以下の項目を知っておく必要があります。詳細は次のとおりです。
著作物がフリーで使える場合
著作権法にまつわる一部のケースでは、著作権フリーで活用できます。その場合は著作物とはいえ、著作権者の利益を害さないよう、条件が定められています。著作物がフリーで使える主なケースについては、以下のとおりまとめました。
私的使用のためにコピーする
自分の仕事や学びの参考資料として著作物をコピーすることは、著作権の侵害に該当しません。 家庭教師の立場であれば、テキストやドリルをコンビニなどでコピーやスキャンし、教え子を含む他者への配布や配信をしないよう心がけましょう。あくまでも自分の情報収集の参考資料として活用する意味合いとなります。
図書館で書籍をコピーする
地方公共団体が設ける公共図書館では、著作権法第31条1項の「図書館等における複製等」に則り、図書館利用者が調査や研究などの目的としてコピーの依頼があった場合、図書館にある書籍や資料のコピーが可能です。
ただし、図書館では、館内の資料以外のコピー禁止などの細かいルールがあるので、コピーする前に図書館の公式ホームページや館内の張り紙などでチェックしましょう。
数学の公式や定理を教材制作で活用する
数学には三角比や二次関数などの複数の公式やピタゴラスの定理などがあります。これらは、「思想または感情を創作的に表現したもの」もののカテゴリーに入るため、著作物には当てはまりません。家庭教師が数学の教材として公式や定理を活用しても問題ありません。
著作権フリーで使える教材サイトを活用する
教材サイトの運営者(=著作者)が「ダウンロードフリー」「無料ダウンロードOK」といったサイトであれば、家庭教師の教材として活用できます。ケースバイケースで活用するのも良いでしょう。
事実を伝えた新聞記事を引用する
取材者の氏名が掲載されている新聞記事は、基本的に著作権があるため活用できません。ただ、災害や交通事故が発生した、国王が即位したなどの出来事を伝える記事は、著作権が発生しないため、教材作成の目的でも活用できます。
著作物が使えない場合
家庭教師が教材制作として評判の良い問題集のコピーをしたいと思うこともあるかもしれません。教材制作の場合、以下の行為が著作権上の問題となります。特に家庭教師歴が浅いという方は、どのようなケースが著作物を使えないかを把握しておきましょう。
第三者が作成したテキストや表、グラフ、図版などをコピーした
家庭教師のカリキュラムにおいて、テキストや表、グラフや図版は必要です。ただし、第三者が作成したものであれば、「これを使いたい」と思っても、使えないので注意です。
市販の問題集をそのままコピーして生徒に配布した
市販の問題集は綿密なリサーチによって作成されているので、良質な出題も多く、生徒の学力や偏差値アップのきっかけになります。家庭教師でも市販の問題集を使いたいと思うかもしれません。これらの問題集には、巻末などにコピー禁止の注意事項が記載されているので、チェックしておきましょう。
市販の問題集の数値や語句を一部修正して生徒に提供した
市販の問題集のそのままコピーするのが著作権侵害に相当するなら、問題集の一部の数値や語句を書き換えて(例:100×5を100×6といった数値の書き換え、本文の山田さんを鈴木さんに書き換えるなど)、生徒に提供すれば差支えないかと思う家庭教師もいることでしょう。著作物の内容の書き換えは、著作者人格権の一つである「同一性保持権」の侵害にあたるため問題集の内容を一部修正して、生徒に提供できません。なお、「同一性保持権」とは、著作物およびそのタイトルにつき著作者の意にそぐわない形で変更や削除などの改変を禁ずる権利です。問題集をコピーしても書き換えたから大丈夫と思っていても、何らかの形でトラブルが発生する恐れが気を付けましょう。
生徒が購入すべきドリルとワークブックをコピーする
学校などの教育機関でも家庭教師でも、生徒が購入することを前提としたドリルやワークブックのコピーは、著作権の適用対象外のため、注意が必要です。
どうしても絶版した教材を使わせたい!
家庭教師をしている人のなかには、「絶版ものを使いたい」というこだわりがあるかもしれません。絶版したものが図書館にある場合なら、著作権法第31条1項の「図書館等における複製等」に則り、書籍の絶版などの理由で入手困難な資料をデジタルで複製が可能です。複製した資料については、図書館などでインターネット送信できます。
問題集は購入がベター
家庭教師で生徒に相応しい問題集がある場合、問題集を購入するかしないかで迷うことがあるかもしれません。購入したい問題集でほぼ全般に取り組むなら、購入しても「損」をした感触はあまりないでしょう。一方で150ページの問題集のなかでわずか数か所のみを教材として使いたいケースであれば、「わずか数か所のために問題集を買うなんて……」と思うかもしれません。
やはり著作権の違法やトラブルなどを考慮すると、問題集の使い方や使う範囲に関係なく、多少出費があっても問題集を書店かECサイトで購入しておきましょう。コストをなるべく抑えたいという場合なら、フリマアプリなどでお目当ての問題集を探すのも一つの手です。
社員やアルバイトで雇われている家庭教師は、問題集のコピーの許容範囲や方法に規制があります。例えば、問題集をコピーして生徒に配布する行為は違法なので、十分気をつけなくてはなりません。また、絶版本に関しては、公共の図書館で対応している場合があるので、チェックしておきましょう。
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