【海外作品と国内作品の著作権】利用許可申請のやり方と著作物の使用料を徹底解説
「国内作品の著作権申請はいくらかかるの?」
「海外作品を使って創作活動したいけど、利用許可の申請方法がわからない!」
「インターネット公開する際の著作権申請について知りたい」
他人の著作物を使用して創作活動を進める場合、利用許可を申請しなければならないシーンがあります。
教材制作などの著作物作成時は、国内作品や海外作品の文章を参考にして作る方も多いです。
一方、国内や海外の作品を使って自分の著作物を作成しようとしても、「具体的な著作権申請方法や費用がわからない」といった方もいるのではないでしょうか。
国内作品の著作権と海外作品の著作権におけるルールは、利用許可申請のやり方や費用が異なるのです。
許可申請のやり方や費用を把握していないと、自分の作品を公表するまでに余計な時間や手間がかかったり、著作権トラブルに発展したりする可能性もあります。
著作物をスムーズに制作するためにも、国内や海外の作品を利用する際の流れについて知る必要があるでしょう。
今回は、国内作品や海外作品の著作権に関して疑問や不安を持つ方に向け、下記の内容についてご紹介します。
●【国内作品の著作権】文章の利用許可申請の方法と費用
●【海外作品の著作権】文章の利用許可申請の方法と費用
●国内作品や海外作品をインターネット公開する際の注意点
本コラムを読めば、国内作品や海外作品の著作権について知り、許可申請のやり方や使用料金の仕組みを理解できるでしょう。また、後半では著作物をインターネット公開する場合の許可申請や費用についても解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
【国内作品の著作権】文章の利用許可申請の方法と費用
国内作品の文章を利用する際の許可申請の方法と、費用について解説します。
- そもそも国内の文章作品とは?
- 国内の文章作品を自由に使っていい場合
- 国内の文章作品の利用許可を申請する方法
- 国内の文章作品の利用許可申請にかかる費用
基本的に国内作品を使う場合は、著作権者から許可を得る必要があります。 一方、扱い方や利用シーンによっては自由に使っていいケースもあるので、具体的な例について確認しておきましょう。 ここからは、上記4つの点について詳しく解説していきます。
そもそも国内作品とは?
国内作品とは、言葉の通り「日本で制作された著作物」のことです。 著作権法における著作物の例として、以下のような作品があげられます。
- ●小説や論文、講演などの言語で示された文章作品
- ●邦楽などの音楽作品
- ●舞踊や無言劇などの動作や表情で表現する作品
- ●絵画や彫刻などの美術品
- ●建築
- ●地図や学術的な性質をもつ図形
- ●映画やドラマ
- ●イラストや写真
- ●プログラム言語
参考:著作権法 | e-Gov法令検索
他にも、日本で制作された二次的著作物や編集著作物、データベースなども国内作品に該当します。 個人の創作活動によって制作された上記のような国内作品は、すべて「著作権」によって保護されています。 何かしらの用途で国内作品を使用する場合、著作権を有する方に利用許可を申請しなければなりません。 著作権者の許可なしに無断で使用すると、著作権侵害と判断されトラブルに発展する可能性があるでしょう。 著作権に関するトラブルを防止するためにも、適切な方法で利用許可を得る必要があるのです。
国内の文章作品を自由に使っていい場合
基本的に国内作品は著作権によって保護されており、無断利用が禁じられています。 ただ、例外的に著作権者の許可を得なくても、利用シーンや目的によっては自由に利用することが許されているケースもあります。 著作物の無断使用が許される利用目的として、以下の例があげられます。
- ●営利目的ではないプライベートでの利用
- ●図書館運営に関わる業務(著作物維持のための複製など)
- ●ルールに沿った引用
- ●国が定義する学校教育
- ●教材の拡大
- ●学校教育番組の包装
- ●試験問題の題材としての複製
文化庁:「著作物が自由に使える場合」
著作権法が定める利用目的であれば、著作権者の許可を得ずに使用することが認められているのです。
国内の文章作品の利用許可を申請する方法
国内の文章作品の利用許可を申請する方法について解説します。 国内文章作品の利用目的が、上記の「著作物が自由に使える場合」に該当しない場合、著作権者に許可申請して料金を支払うのが一般的です。 適切な方法で利用許可の申請を行わなければ、著作権トラブルに発展する可能性が高いので注意しましょう。 ここでは、国内の文章作品を使用する場合における利用許可申請の具体例を解説します。 具体的な文章作品の利用許可を得る一般的な流れは、以下の通りです。
具体的な文章作品の利用許可を得る一般的な流れ
- 1.文章作品が国内で公表された著作物か確認する
- 2.文章作品が保護期間内であるか確認する
- 3.無断利用が認められている文章作品か確認する
- 4.著作権者に利用許可の申請をする
国内作品を使用したい場合は、日本で公表されたものかや保護期間内にあるかを確認しましょう。 文章作品が保護期間外であったり、著作権者が「無断利用OK」と公表していたりする場合、利用許可を申請する必要はありません。 また、文章作品の利用許可を得る具体的な方法は、主に以下の2つです。
文章作品の利用許可を得る具体的な方法
- 著作権者から直接許諾を得る
- 著作権者に著作物利用許可申請書を送って許諾してもらう
国内作品を使用する場合、著作権者から直接利用許可を得ることが可能です。 口頭で文章作品の使用許諾を得ても問題ありませんが、認識の食い違いで後から著作権トラブルが発生する可能性もあります そのため、使用許諾を得る際は利用方法や範囲、使用料金などの内容を、文書に保存しておきましょう。 また、文章作品の出版社に「著作物利用許可申請書」を送ることで、利用許可を得る方法もあります。 文章作品の利用許可を申請したい場合は著作物を管理する出版社に、著作物利用許可申請書をFAXなどの手段で送りましょう。 ただ、利用許可申請書を出版社に送付したからといって、必ずしも使用許諾を得られるとは限りません。 著作権者から使用許諾を得られなければ、文章作品を使用することはできないので、注意しましょう。
国内の文章作品の利用許可申請にかかる費用
国内の文章作品を利用する際の、使用料について解説します。 結論から言うと、国内の文章作品の使用料は以下の場合によって異なります。
- 著作権管理団体に著作物の管理委託が「ある」場合
- 著作権管理団体に著作物の管理委託が「ない」場合
著作物の利用許可申請をスムーズに行うために、国内作品の分野別に著作権管理団体が存在します。 使用したい文章作品が団体に管理委託されていない場合、著作権者に直接利用許可を申請する必要があるのです。 その場合、著作権者が定めた使用料の支払いが一般的です。 一方、使用したい文章作品が団体に管理委託されている場合、組織が定める規定に沿って使用料が決定します。 例えば、日本文芸家協会の著作物使用料規定では、出版物の使用料について下記のように述べています。
(出版における使用料等) 第6条 著作物を書籍として複製し、公衆に譲渡する場合の使用料は、本体価格の15% に発行部数を乗じた額を上限として利用者と本協会が協議して定める額とする。
引用:公益社団法人日本文藝家協会 著作物使用料規程
(出版における一部利用等) 第7条 出版において著作物の一部を利用する場合は、著作物の利用方法、掲載される出 版物の種類、販売価格及び発行部数等を参考に、利用しようとする著作物について、前 条により著作物を出版する場合の使用料額の半額を上限として利用者と本協会が協議し て定める額とする。
引用:公益社団法人日本文藝家協会 著作物使用料規程
「出版における使用料等」と「出版における一部利用等」の両方で、「使用料は利用者と本協会が協議して定める額とする」と述べています。 ただ、上記の条文では著作物の使用料の上限を定めており、まとめると以下の通りです。
出版する場合の使用料上限 | 本体価格の15%に発行部数を掛け算した額 |
---|---|
一部利用する場合の使用料上限 | 出版する場合で定めた使用料の「半額」 |
日本文芸家協会によると、使用料は文章作品の利用方法などによって異なります。 利用したい文章作品が、日本文芸家協会に管理委託されている場合は、公式ページの申請フォームから細かい金額を問い合わせましょう。
【海外作品の著作権】文章の利用許可申請
海外作品の文章を使用する場合の利用許可申請の方法と、費用について解説します。
- 海外作品における著作権
- 海外の文章作品の利用許可を申請する方法
基本的に、作品は公表された国の法律によって著作権が保護されます。 ここからは、上記2つの点について詳しく解説します。
海外作品における著作権
海外作品は、ベルヌ条約や万国著作権条約といった世界共通のルールによって、権利が保護されています。 例えば、日本で英語教材を制作する際に米国の文章作品を使用する場合は、日本の著作権ルールに従う必要があるのです。 ただ、海外作品の利用許可申請は、複雑で時間のかかる場合が多いです。 日本著作権教育研究会は、海外の著作物の利用に関して下記の問題点を提起しています。
- 利用許可が出されるまで時間と費用がかかりすぎるケースがある
- 文章の改変部分が多いと申請できないケースがある
- 文章作品の出典情報不足で申請できないケースがある
- 出版社やエージェント、弁護士に申請するケースが多い
参考:入試問題と著作権 - 海外文献の利用・海外著作物の利用許諾申請
海外作品の利用許可申請は、国内作品より手間と時間、コストがかかるため、余裕をもって行動する必要があるのです。
海外の文章作品の利用許可を申請する方法
基本的に、海外作品の利用許可申請は国内作品の場合と同じでしょう。
- 著作権者にコンタクトをとり利用許可を申請する
- 管理団体に問い合わせて利用許可を申請する
日本には、海外の著作権管理団体と締結している組織があります。 例えば、文章作品の著作権などを管理するJCOPY(出版社著作権管理機構)では、下記の複製権管理団体と双務契約を結んでいます。
- 米国:Copyright Clearance Center, Inc.(CCC)
- 英国:The Copyright Licensing Agency Ltd.(CLA)
- 豪州:Copyright Agency Limited(CA)
- ニュージーランド:Copyright Licensing New Zealand(CLNZ)
- アイルランド:The Irish Copyright Licensing Agency(ICLA)
- スイス:ProLitteris
引用:国外著作物の複製|出版社著作権管理機構
海外作品の利用許可申請を行う際は、海外の著作権管理団体と連携している日本の管理団体をチェックしましょう。
国内作品や海外作品のインターネット公開|授業目的公衆送信補償金制度について
国内作品や海外作品をインターネット公開する際の注意点について解説します。 一般的に、著作権者の許諾なしに国内作品や海外作品をインターネット公開すると、著作権侵害に該当するケースが多いです。 一方、上記で述べた「著作物を自由に使える場合」であれば、利用許可を得ずに使用することが可能です。 例えば、学校教育における授業を目的とした著作物の使用は、補償金を支払うことでインターネット公開してもいいと認められています。 2018年5月には、著作権法改正により「授業目的公衆送信補償金制度」が創設されました。 情報技術の発展に伴い、オンライン授業やICT機器を活用した学習指導が推進されています。 授業目的公衆送信補償金制度は、教育の情報化で著作物利用の円滑化を図るために試行された制度です。 著作権法第104条の13第1項には、補償金の額について下記のように示されています。
第百四条の十三 第百四条の十一第一項の規定により指定管理団体が授業目的公衆送信補償金を受ける権利を行使する場合には、指定管理団体は、授業目的公衆送信補償金の額を定め、文化庁長官の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
引用:著作権法 | e-Gov法令検索
文化庁は、授業目的公衆送信補償金制度の管理団体として、一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)を指定しています。
参考:授業目的公衆送信補償金に係る指定管理団体の指定について | 文化庁
具体的な補償金額の一部は、以下の通りです。
学校 | 補償金額(1人当たり) |
---|---|
幼稚園 | 60円 |
小学校 | 120円 |
中学校 | 180円 |
高校 | 420円 |
大学 | 720円 |
上記の制度は、国内作品や海外作品の利用目的が授業であった場合のものです。 そのため、営利目的での販売やインターネットや動画サイトへの一般公開を行う場合、著作権者に利用許諾が必要なので注意してください。
今回は、国内作品の著作権や海外作品の著作権、利用許可申請方法、著作物のインターネット公開について解説しました。 基本的に、営利目的における著作物の使用は、著作権者に利用許可を申請する必要があります。 無断で使用すると、著作権侵害と判断され罰金や損害賠償金の支払いが命じられるケースもあるので、注意してください。 また、国内作品や海外作品をインターネットや動画サイトで一般公開すると、著作権侵害に該当する可能性が高いです。 たとえ授業目的であっても、著作権者の利益が不当に害される場合は、著作権侵害として訴えられます。 そのため、オンライン授業などで著作物を扱う際は、閲覧制限をかけてアップロードする必要があるでしょう。 ぜひこの記事を参考に、著作物の利用許可申請方法や使用料、補償金額の支払いについてチェックしてください。
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