【AIによる創作物の著作権】機械が作る作品の知的財産権や日本の法整備を解説
● 「AIや機械が制作した作品に知的財産権はあるの?」
● 「AI作品で著作権保護が認められる条件は?」
近年、テクノロジーが発展したことにより、人がAIを使って創作活動を行ったり、AI自身
が作品を制作したりできます。一方、AIや機械を用いて作品を制作する場合、著作権は保
護されるのか、気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか?今回は、AIによる創作
物の著作権について興味や関心がある方に向け、AIを利用した作品制作や著作権保護が認
められる条件について解説します。また後半では、AIの創作物における日本の法整備につ
いても簡単に説明しているので、ぜひ最後までご覧ください。
AIとは?機械の創作物における著作権
AIについてや機械の創作物における著作権についてご紹介します。
● そもそもAIとは?
● AIが絵画や音楽などの作品を制作する仕組み
● AIの創作物は著作権保護されるのか
● AIが制作できる作品の具体例
AI技術の発展により、現在は人の手を使わずに絵を描いたり作曲したりと、さまざまな作品が機械で制作できます。ここからは、上記4つの点について具体的に解説します。
そもそもAIとは?
そもそもAIが具体的にどのようなテクノロジーであるのか、気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。AIとは「Artificial Intelligence」の略称であり、人工知能のことです。現在、世界で最も注目されているテクノロジーの1つであり、人の思考や行動、感覚などを人工的に再現することが可能です。実際に、音声・画像認識機能や個人の顔を判別する機能など、AI技術はさまざまな分野で応用されています。芸術分野も例外ではなく、絵画やイラスト、音楽、文章執筆といった分野にも進出しています。最近までは、AIや機械が人の創作活動を模倣することは不可能とされていました。しかし、テクノロジーの発展 により、芸術作品を制作するAIが作られているのです。
AIが絵画や音楽などの作品を制作する仕組み
AIが芸術作品を制作する仕組みについて解説します。上記では、AIが人の思考や行動、感覚などを人工的に再現できる人工知能と述べましたが、正式な定義は統一されていません。ただ、AIに人を模倣させるためには、人工知能にコンピューター上で機械学習をさせ、情報処理を行う必要があります。機械学習とは、コンピュータが複数のデータを取り込み、数あるデータを分析することでルールやパターンを発見することです。また、AIにおける情報処理とは、機械学習で見つけ出したルールやパターンをもとにデータの加工・抽出を行い、指令の目的に沿った情報を出力することです。あらゆる分野で応用されており、芸術作品を制作する際も例外ではありません。絵画であれば色や形などの絵画に関する情 報、音楽であれば音階や楽器の音などの情報をAIが学習することで、それらの情報をもとに芸術作品を出力できるのです。
AIの創作物は著作権保護されるのか
結論から言うと、AIが関与した作品は、著作権保護が認められる場合と認められない場合があります。人工知能を応用すれば、人間の創作活動を模倣しオリジナルの芸術作品を制作できますが、AIは人ではありません。他人の絵画や音楽、小説などを取り扱う上で注意しなければならないのは、作品の知的財産権です。作品に著作権保護が認められるのは、人の思想や感情を表現した創作物である必要があります。AIは創作活動を行えますが、人間のような思想や感情がないため、人工知能が単独で制作した作品には、著作権保護が認められないのです。しかし、AIを道具として利用し作品を制作した場合などは、知的財産権の保護対象となる可能性が高いでしょう。そのため、AIによる創作活動の注意点は、該 当作品が「AI単独で制作したもの」なのか、それとも「AIを道具として制作したもの」なのかという点です。
AIが制作できる作品の具体例
AIが制作できる作品の具体例についてご紹介します。人間が作成したら数日間かけて創作活動しなければならない作品でも、数分で制作することが可能です。AIが制作できる作品の具体例は、以下の通りです。
● 絵画やイラスト、デザイン
● 作詞・作曲が必要な音楽
● 風景や人などの写真
● アニメーションなどの映像作品
● 小説や記事などの文章作品
AIは、絵画や写真、音楽などのデータを取り込み、各芸術作品の優れた点を機械学習により学びます。蓄積してきた優れたデータを処理することで、アートを制作できるのです。
すべての人工知能・機械が美しい創作物を生み出すのは難しいです。しかし、用途や目的、使い方によっては、人間が制作する以上に優れた芸術作品を制作できます。今後もさらにAI技術が発展すると予想され、機械のみで人間の創作性を超える作品も生み出せるようになるでしょう。
AI作品に著作物性はある?著作権保護が認められる要件
AIや機械によって制作された作品に、著作権保護が認められる要件をご紹介します。
● 作品に人の思想や感情がある
● 人の思想や感情を作品に表現している
● 作品に創作性がある
● 文芸・学術・美術・音楽の範囲に属する
● 著作物の具体例
AI作品に著作権があるのか判断する前に、著作物の具体的な要件と作品の例を把握しておきましょう。ここからは、上記5つの点について詳しく解説します。
作品に人の思想や感情がある
作品の著作権保護が認められるには、人の思想や感情があることが必要です。著作権によって保護されるすべての作品は、人間の考え方や思い入れが関与して制作されています。そのため、人の思想や感情が関わっていない作品ほど、著作権保護が認められにくいのです。たとえば、知能の高い動物がカメラを触り、偶然撮影された写真などは、著作物には該当しません。なぜなら、写真の撮影は「動物」が行っており、人の思想や感情が含まれないからです。そのため、動物の例と同じようにAIが制作したものも権利の保護対象とはなりません。また、単なる事実やデータなども、著作権によって保護されません。たとえ ば、テレビやインターネットのニュースに表示される事実や、気象データなどがあげられます。人の考え方や思い入れによって制作されたものではないため、著作権保護が認められないのです。
人の思想や感情を作品に表現している
作品に著作権保護が認められるには、人の思想や感情を作品に「表現」している必要があります。作品における著作者の表現は多種多様であり、小説家であれば文章や言葉・フレーズ、画家であれば、実物の絵画などがあげられます。また、写真家の場合は実際に人や風景が撮影された写真などが表現に含まれるでしょう。一方、著作者の単なる「アイデア」などは著作権が発生しません。著作権保護の対象となるには、何かしらの方法によって
作品に創作性がある
作品に著作権保護が認められるためには、制作した作品に創作性がある必要があります。上記でも述べたように、著作物とは著作者の考えや思いを表現しているものです。一方、他人の著作物と模倣して制作した作品など、作者独自の創作性がなければ著作権の保護対象とはなりません。たとえば、文章作品の複製物や盗作によって制作された映像作品などは、権利の保護対象外となるでしょう。また、上記では単なる事実やデータは著作権が発生しないと述べました。しかし、単なる事実やデータであっても、新聞の見出しの順番や雑誌の配列、データを見やすくするための工夫などは、創作性があると認められる可能性 があります。
文芸・学術・美術・音楽の範囲に属する
作品に著作権保護が認められるには、著作権法(第10条1項)が定めた作品の範囲に属している必要があります。具体的な著作物として、以下の例があげられます。
●小説や脚本、論文などの文章
●BGMや楽曲などの音楽
●ダンスなどの舞踏や無言劇
●絵画や彫刻などの美術作品
●ホテルなどの建築
●地図や図面・図表などの学術的な性質をもつ図形
●映画
●人や風景などの写真
●プログラム
文章の著作物としてイメージが強いのは小説などの作品ですが、SNSで投稿した文章なども含まれます。そのため、人の思想や感情が表現されている創作物であれば、著作権保護の対象となることを認識しておきましょう。
AIの創作物に著作権保護が認められるには?
AIの創作物に関する著作権保護は、人間による創作性が含まれるかという点が重要です。AIが関与する創作活動として、以下の2つのパターンが考えられます。
● 作品制作をすべてAIに任せる
● AIを道具として利用する
AI作品が著作権の保護対象となる可能性が高いのは、絵画や小説などを制作するために道具としてAIを活用した場合です。AIを使いすぎず、著作者の思想や感情が創作的に表現されていれば、著作権が発生するのです。一方、作品制作で大部分の内容をAIが制作した場合、著作権が認められない可能性が高まるでしょう。AIの創作物に著作権保護が認められるには、作品を制作する過程において人が創作性を加える必要があるのです。
AIの創作物における著作権の法整備の展望
AI技術は今後もますます発展することが予想され、AIによる創作物が爆発的に増加する可能性があります。AIが制作した作品に知的財産権を付与しなければ、価値のあるAI創作物の権利が保護されなかったり、AIの活用が進まなくなったりする可能性があります。たとえば、現在では著作権は作品が制作された時点から自然に発生しますが、AI作品に関しては手続きを踏んで知的財産権を取得するといった検討もされています(参考:知的財産戦略推進事務局)。AI作品の権利を守るためにも、今後日本も著作権法を整備していくことが予想されるのです。
今回は、作品についてや作品が著作権保護の対象となる条件、日本の法整備についてご紹 介しました。AIや機械のみで制作した作品には著作権保護が認められていません。作品が 著作物とみなされるためには、AIを道具として利用し、著作者の思想や感情を創作的に表 現する必要があるのです。一方、今後もAIによる創作物は技術の発展に伴い増加していく でしょう。AI作品に知的財産権を付与しなければ、価値のある作品の権利を保証できない ため、日本も徐々に著作権法が整備されていくことが予想されます。
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